
「環境経営計画を作ってほしい」と言われたものの、何から始めればいいかわからず、頭を抱えていませんか。産廃業者として初めて策定に取り組む方にとって、手順が見えないまま進めるのは不安なものです。この記事では、環境経営計画の策定ステップを5つに整理し、各ステップで何をすればよいかを具体的にお伝えします。計画書を一から仕上げるための道筋として、ぜひ参考にしてください。
環境経営計画の策定ステップは全部で5つ【最初に結論】

環境経営計画の策定ステップは、大きく分けて以下の5つです。全体の流れを先に把握しておくと、各作業の意味が理解しやすくなり、途中で迷うことも少なくなります。
ステップ1:現状の環境負荷を把握する
自社の事業活動が環境に与えている影響を洗い出します。廃棄物の排出量、電力・燃料の使用量、車両の走行距離など、数値で確認できるデータを収集するのが第一歩です。「今どんな状態か」を把握しなければ、目標も対策も立てられません。まずは手元にある伝票や請求書をもとに、環境負荷の実態を整理しましょう。
ステップ2:環境方針(取り組みの基本姿勢)を決める
自社として環境にどう向き合うか、基本的な姿勢を言葉にします。環境方針とは、計画全体の「軸」となる宣言文のようなもので、具体的な数値目標を並べる前に、まず方向性を定める役割を持ちます。経営者の言葉で書かれていることが大切で、「環境法令を守る」「廃棄物の削減に継続的に取り組む」といった内容が基本となります。
ステップ3:数値目標と行動計画を設定する
環境方針をもとに、具体的な目標数値と達成のための行動計画を決めます。「CO2排出量を前年比5%削減する」「燃料消費量を年間○リットル以内に抑える」など、達成度を後から確認できる形にするのがポイントです。行動計画には、誰が・いつまでに・何をするかを明記しておくと、担当者が動きやすくなります。
ステップ4:計画書としてまとめて社内・社外に共有する
決めた内容を一枚の計画書にまとめ、社員全員が確認できる状態にします。計画書は、方針・目標・行動計画・責任者・期間を含むのが基本的な構成です。取引先や自治体への提出が必要な場合は、提出先が求めるフォーマットを事前に確認しておきましょう。共有することで、全社での取り組みとして機能するようになります。
ステップ5:実施状況を定期的に確認・見直す
計画を作って終わりではなく、定期的に実施状況を振り返ることが欠かせません。半期や年度ごとに目標の達成度を確認し、うまくいっていない部分があれば原因を考えて計画を修正します。環境経営計画はPDCAサイクルを回し続けることで効果が出るものです。継続的改善の仕組みを社内に定着させることが、長期的な成果につながります。
そもそも環境経営計画とは何か(産廃業者向けにわかりやすく解説)

環境経営計画とは、自社の事業活動が環境に与える影響を把握したうえで、削減目標や具体的な取り組みを文書化したものです。簡単にいえば「環境への配慮を、言葉ではなく計画として形にしたもの」と考えてください。
産廃業者にとって、廃棄物の収集・運搬・処理は事業の中核です。車両による排ガスや燃料消費、施設での電力使用、廃棄物の処理過程で生じる環境負荷など、業務上の環境への影響は決して小さくありません。だからこそ、環境経営計画を持つことに実質的な意味があります。
環境経営計画は、ISOの認証取得を前提とした大企業向けの制度とは異なり、中小規模の事業者でも作成できます。書式に厳密なルールがあるわけではなく、自社の実態に合わせて作れば問題ありません。重要なのは「作ること」よりも「継続的に見直しながら運用すること」です。
環境方針、数値目標、行動計画、点検・見直しの仕組みを盛り込んだ計画書が一般的な形です。エコアクション21のような中小企業向けの環境マネジメントシステムを参考にすると、産廃業者の規模感に合った計画を作りやすいでしょう。
産廃業者が環境経営計画を策定すべき理由

「なぜ今、環境経営計画が必要なのか」と疑問を持つ方もいるかもしれません。背景には、取引先や自治体からの要請だけでなく、業界全体の変化があります。
産業廃棄物処理業は、廃棄物処理法のもとで厳しく規制されている業種です。同時に、脱炭素・循環経済に向けた社会的な流れの中で、廃棄物を「資源」として扱う事業者への期待が高まっています。環境経営計画を持つことは、その期待に応える姿勢を示す手段の一つです。
具体的なメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 取引先の選定基準を満たし、新規取引や契約継続につながりやすくなる
- 自治体の許可更新や補助金申請において、環境配慮の実績として評価される場合がある
- 燃料や電力の使用量を把握・削減することで、コスト削減にもつながる
- 環境法令の遵守状況を社内で定期的に確認する習慣ができ、コンプライアンス管理が強化される
「義務だから作る」という姿勢でも最初は構いませんが、運用を続けるうちに自社の経営改善に役立つ場面が出てきます。環境への取り組みは、社会への責任であると同時に、事業の持続可能性を高める投資でもあります。
各ステップの具体的な進め方

全体の流れを把握したところで、各ステップを実際にどう進めるか、もう一段階掘り下げて解説します。初めての方がつまずきやすいポイントを中心にまとめました。
ステップ1:現状把握のやり方(何を調べればよいか)
現状把握では、環境負荷の「種類」と「量」を整理します。産廃業者が確認すべき主な項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 参照する資料の例 |
|---|---|
| 燃料消費量(軽油・ガソリン) | 給油伝票・経費精算書 |
| 電力使用量 | 電力会社の請求書 |
| 産業廃棄物の処理量 | 管理票(マニフェスト) |
| 車両走行距離 | 運行記録・日報 |
| 水道使用量 | 水道の請求書 |
これらのデータは、年間合計または月平均として整理しておくと、後から目標設定がしやすくなります。正確な数字が出せない場合は、概算でも構いません。「現在どのくらい使っているか」を大まかに掴むことが目的です。
あわせて、現在行っている環境配慮の取り組み(省エネ機器の使用、廃棄物の分別など)も書き出しておくと、環境方針の作成に役立ちます。
ステップ2:環境方針の書き方と記載例
環境方針は、長文である必要はありません。A4用紙1枚以内で、自社の基本姿勢を端的に表現できれば十分です。盛り込むべき要素は以下のとおりです。
- 環境法令・条例を遵守する旨の記載
- 環境負荷低減への取り組み姿勢(省エネ、廃棄物削減など)
- 継続的に改善していくという意思表明
- 社員への周知と方針の公開についての記載
記載例としては、下記のような形が参考になります。
当社は、産業廃棄物の適正処理を通じて地域環境の保全に貢献するため、以下の方針に基づき環境経営に取り組みます。
- 廃棄物処理法をはじめとする環境関連法令・条例を遵守します。
- 燃料・電力の使用量削減を通じてCO2排出量の低減に努めます。
- 環境パフォーマンスの継続的な改善に取り組みます。
- この方針を全従業員に周知し、社内外に公開します。
方針の末尾には代表者の署名と日付を入れると、文書としての信頼性が増します。
ステップ3:目標と行動計画の設定ポイント
目標は「SMARTの原則」を参考に設定すると、後から達成度を評価しやすくなります。
- Specific(具体的):何を削減・改善するか明確にする
- Measurable(測定可能):数値で表せる形にする
- Achievable(達成可能):背伸びしすぎず、現実的な水準にする
- Relevant(関連性):環境方針の内容と結びついている
- Time-bound(期限付き):いつまでに達成するか決める
初めての策定では、目標の数を絞ることをおすすめします。2〜3項目に集中した方が、管理しやすく継続しやすいためです。
行動計画には、目標ごとに「担当者・実施内容・完了時期」を一覧表で整理すると、進捗管理が格段にしやすくなります。たとえば「○月までにアイドリングストップの社内ルールを策定する(担当:○○)」という形です。
ステップ4:計画書の構成と提出・共有の方法
計画書の基本的な構成は以下のとおりです。
- 会社概要(社名・事業内容・従業員数など)
- 環境方針
- 環境負荷の現状(現状把握の結果)
- 数値目標一覧
- 行動計画(担当者・期限付き)
- 点検・見直しの頻度と方法
WordやExcelで作成して問題ありません。書式が定まっていない場合は、上記の構成に沿って1〜3枚程度にまとめると、提出先にも読んでもらいやすい計画書になります。
取引先への提出が目的の場合は、先方の担当者に「求めている形式や項目があるか」を事前に確認しておくと、作り直しの手間を省けます。社内への共有は、朝礼での説明や掲示板への掲示など、全員の目に触れる方法を選びましょう。
ステップ5:振り返りと計画の更新サイクル
計画の実施状況は、少なくとも半年に一度は確認する機会を設けてください。確認すべき内容は次のとおりです。
- 各目標の達成状況(数値の実績と目標の比較)
- 行動計画の進捗(完了・進行中・未着手の仕分け)
- 計画どおりに進まなかった原因の整理
- 次の期間に向けた目標・行動計画の修正
年度末には、次年度分の計画を更新します。初年度の経験をもとに、目標水準や行動計画の内容を現実に即した形に見直すことで、計画が形骸化せずに機能し続けます。
振り返りの記録は簡単なメモでも構いません。「いつ・何を確認したか・どう修正したか」を残しておくと、継続的改善の証跡になり、外部への説明にも使えます。
策定時にありがちな失敗と対処法

環境経営計画を初めて策定する際には、いくつかの落とし穴があります。事前に知っておくことで、同じ失敗を避けやすくなります。
目標が高すぎて初年度から未達になる
意欲的な目標を立てること自体は悪いことではありませんが、初年度から達成が難しい水準を設定すると、担当者のモチベーションが下がり計画が形骸化しやすくなります。初回は「無理なく達成できる水準より少し上」を目安に設定し、次年度以降に段階的に引き上げる方法が現実的です。
数値データが集まらず現状把握が進まない
伝票や請求書が整理されていない場合、データ収集に思いのほか時間がかかります。完璧なデータにこだわるよりも、概算で構わないので「ひとまず数字を出す」ことを優先してください。精度は運用を重ねながら上げていけば十分です。
計画書を作ったが社員に伝わっていない
環境経営計画は、担当者だけが知っていても機能しません。朝礼や掲示物を通じて、全従業員が「何を目指しているか」を理解している状態をつくることが大切です。理解してもらうためには、難しい言葉を使わず、自社の言葉で噛み砕いて伝えることが有効です。
提出後に計画が棚上げになる
取引先に提出して一安心、という状態になりやすいのが産廃業者に限らずよく見られるパターンです。提出の翌月から記録をつけ始める、半期に一度の振り返り日をカレンダーに入れるなど、運用を習慣化する仕組みを最初から組み込んでおきましょう。
まとめ

環境経営計画の策定ステップは、①現状把握 → ②環境方針の決定 → ③目標・行動計画の設定 → ④計画書の作成・共有 → ⑤定期的な振り返り、の5つです。
最初から完璧な計画書を作ろうとする必要はありません。現状を正直に把握し、自社の言葉で方針を書き、実行できる目標を設定することが何より大切です。運用しながら少しずつ精度を上げていく姿勢が、環境経営の継続的改善につながります。
まだ何も手をつけていないという方も、まずは電力や燃料の使用量データを集めるところから始めてみてください。小さな一歩が、計画書完成への確実な道筋になります。
環境経営計画の策定ステップについてよくある質問

-
環境経営計画の策定にはどのくらいの時間がかかりますか?
- データ収集と計画書作成を合わせて、1〜2ヶ月程度が目安です。既存の伝票や請求書が整理されていれば、さらに短縮できます。担当者が1人でも、集中して取り組めば2〜3週間で初版を仕上げることも十分に可能です。
-
計画書のひな形(テンプレート)はどこで手に入りますか?
- 環境省が普及を推進している「エコアクション21」の公式サイトや、各都道府県の環境関連部署が提供している書式を参考にできます。また、産業廃棄物処理業向けの業界団体が独自のひな形を公開している場合もありますので、所属する団体に確認してみてください。
-
社員が数人しかいない小規模な産廃業者でも作れますか?
- 作れます。従業員数に応じた規模の計画書で問題ありません。目標の数を2〜3項目に絞り、管理しやすい形でまとめることが大切です。小規模だからこそ、計画の共有や実行がしやすいという利点もあります。
-
環境経営計画は毎年更新しなければなりませんか?
- 年1回の更新が一般的です。計画期間の終わりに実績を振り返り、翌年度の目標と行動計画を見直します。計画自体を丸ごと書き直す必要はなく、変更箇所を修正して日付と責任者を更新する形で運用できます。
-
自治体への提出が求められた場合、どんな内容が必要ですか?
- 自治体によって求める内容は異なりますが、一般的には環境方針・数値目標・行動計画・点検方法の4点が含まれていれば、基本的な要件を満たせることが多いです。提出前に担当窓口へ確認し、必要な項目や様式を事前に把握しておくことをおすすめします。
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